歯車 焼き入れ

歯車

歯車にはなぜ焼入れが必要?焼入れの工程について詳しく解説

こんにちは、ドリル・エンドミルなど切削工具の再研磨をしているツールリメイクです。

 

歯車に焼入れすると聞いて、なぜ焼入れするの?と疑問に思ったことはありませんか?

 

「そもそも焼入れってなに?」

「なぜ歯車には焼入れが必要なの?」

 

といった方に向けて、焼入れがどういった加工なのかなぜ歯車に焼入れが必要なのかついて紹介していきましょう。

 

歯車の加工に使われる熱処理についても解説するので、歯車の熱処理について知りたい方も要チェックです。

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焼入れ処理って一体なに?

焼入れ処理は、高温になり赤くなった鋼を急冷し、鋼を硬くする処理のことです。

焼入れ処理で最もイメージしやすいのが「刀鍛冶」。刀鍛冶が刀を炉の中で真っ赤になるまで熱し、水の中に「ジューッ」とつけているのが、焼入れ処理そのものです。

 

炭素分を含んだ鉄は「鋼」と呼ばれますが、鋼は赤くなるほどの高温から水や油などで急冷すると硬くなります。焼入れ処理をして鋼の硬度が上がると、摩耗などにも強くなります。

 

歯車は、歯車同士で常に接している性質上、硬度が低いとすぐに摩耗してしまうため、歯車において焼入れ処理は歯車の寿命を向上させるために必要です。

 

ところが、焼入れ処理をした鋼は硬くなった反面、脆くなり、欠けやすくなってしまいます。歯車の歯がかけてしまうと滑らかな動作を見込めなくなってしまうので、これではいけません。

 

そこで重要となってくるのが焼入れを含む「熱処理」です。

歯車には熱処理が不可欠

焼入れしただけの歯車は、硬度が高すぎて歯が欠けやすくなってしまいますので、粘り強さを取り戻す処理を行います。これが「焼戻し」と呼ばれる処理です。

焼戻しでは、再度鋼を熱しますが、焼入れ時よりも低い温度で加熱するのが特徴です。この焼戻し工程によって、鋼は粘り強さを取り戻します。

 

「焼入れ」「焼戻し」を含め、歯車に熱を加える処理を「熱処理」と呼びます。

歯車は、強度や耐摩耗性、対靭性などが高い次元で求められるため、過酷な環境で使用される歯車には熱処理が必要不可欠です。

熱処理には焼入れ、焼戻し以外にも種類があるので解説していきましょう。

歯車の熱処理の種類

歯車の熱処理には様々なものがあります。

 

  • 焼ならし
  • 焼きなまし
  • 焼き入れ
  • 焼戻し

 

これらの熱処理は単独で使われる場合がありますが、組み合わせて使い、理想的な歯車に仕上げていくのが一般的です。

それではひとつひとつ解説していきましょう。

焼ならし

焼ならしは、加工によって生じた鋼組織の均一化をする処理です。

切削、鍛造、圧延などの加工をすると、鋼の組織が歪んでしまい機械的な性質が最大限に発揮されません。

そこで行われるのが焼ならしで、焼ならしは鋼がオーステナイト化するよりも高い温度で加熱し、空冷することによって組織を均一化します。

 

この処理によって鋼の内部応力が取り除かれ、鋼内部にかかっている力がなくなります。

歯車では、切削加工の前に材料の圧延などによって発生した繊維組織を取り除くことが目的で行われます。

焼きなまし

焼きなましは、鋼を柔らかくするのが目的で行われます。

焼きなましをしていない鋼は非常に硬く、切削性が悪くなってしまいます。鋼を柔らかくして切削しやすい状態にするのが焼きなましです。

焼きなましの場合は、鋼がオーステナイト化するよりも高い温度で加熱し、炉内でゆっくりと冷却します。

 

焼ならしとよく似ていますが、焼きなましは組織の均一化ではなく、柔らかくする点で大きく異なります。焼ならしは空冷ですが、焼きなましは炉内冷却という点でも違います。

焼きなましは、加熱する温度域で役割が微妙に異なってきます。

 

  • 完全焼きなまし:完全に鋼を柔らかくする
  • 応力除去焼きなまし:残留応力を除去する
  • ひずみ取り焼きなまし:荷重をかけながら行い、加工中に生じたひずみを除去する
  • 中間焼きなまし:加工硬化した材料を軟化させる

 

これらの処理は、材料の状態によって使い分けられています。

焼き入れ

冒頭に紹介した通り、熱したあと水や油などで鋼を急冷させるのが「焼入れ」です。

この焼入れ処理の硬化度合いは、鋼の中に含まれる炭素の量で変化し、炭素の量が多いほど焼入れ性が高くなります。最も影響するのは炭素量ですが、他の微量元素の有無によっても焼入れ性は変化します。

 

焼入れだけを施した場合は、鋼は硬い反面もろくなってしまうので注意が必要です。

 

焼入れの方法にはいくつかあり

 

浸炭焼入れ…低炭素鋼の表面に炭素を染み込ませ、表面だけを固くする

高周波焼入れ…鋼に高周波で電磁誘導で鋼の表面を加熱する、中心部の靭性は高いままになる

全体焼入れ…鋼全体を加熱して焼入れする。内部まで硬度を高くできる

 

などが代表的です。

焼戻し

焼入れで硬くなりすぎた鋼に適度な靭性を戻す役割を担うのが「焼戻し」です。

焼入れした歯車を低い温度で再度加熱し空冷することで、硬さと丈夫さを兼ね備えたものとなります。

硬度を優先する場合は低温焼戻し、靭性を優先する場合は高温焼戻しと用途によって使い分けられます。

歯車は熱処理で性能を最大化できる

歯車は柔らかすぎても、硬すぎてもその能力は最大限に発揮されません。

適切に熱処理を加えることで、歯車の持っている力を最大限に発揮できるのです。

歯車には焼入れだけでなく、様々な熱処理が大切だということを覚えておいてくださいね。

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