こんにちは、ドリル・エンドミルなど切削工具の再研磨をしているツールリメイクです。
「歯車ってどんな種類があるのかな?」と調べてみると、たくさんの歯車がでてきて頭がパンクしてしまった。そんな経験をした方も多いのではないでしょうか?
歯車の仕組みには解説されていても、実際にどんな場面で使われているかまで紹介していることって少ないですよね。
そこで今回は
「どんな歯車があるのか一通り知りたい!」
「歯車の形状の違いってどんなものがあるの?」
「歯車の使用例を知りたい!」
といった方に向けて、歯車の種類とその用途について詳しく紹介していきたいと思います。
これから機械設計をはじめようと考えている方は必見です。
歯車とはどんなもの?
そもそも歯車って、どういうものなの?という方もいるかもしれませんので、歯車がどんな役割を担っているのかかんたんに解説しておきましょう。
歯車は「連続して噛み合う歯で力を伝達する機構」を指します。
力を伝える方法には、ベルトやローラー、チェーンなど様々な方法がありますが、歯車は力を伝える際に最も確実で強力な方法です。
歯車の特徴には
- 力を伝達する際に滑りが発生しにくい(ロスが少ない)
- 歯数の組み合わせによって、回転比率を調整しやすい
- 軸の組み合わせの自由度が高く設計に柔軟性がある
などといった特徴があります。
歯車を使った動力の伝達は、機械設計の中でも基本になり、歯車の動力とリンク機構を組み合わせれば様々な機械を設計できるようになるでしょう。
柔軟な機械設計には、歯車の種類についてよく理解することが大切です。
歯車の種類とその用途
ここからは歯車の種類とその用途について紹介していきましょう。
歯車はたくさんの種類がありますが、組み合わせる歯車の軸の交わり方で大きく3つに分けられます。
平行軸歯車:2つの歯車の軸が平行な歯車
交差軸歯車:2つの歯車の軸が交わる歯車
食い違い軸歯車:2つの歯車の軸が平行でもなく、交わりもしない歯車
これらのジャンルに分けて、歯車を紹介していきましょう。
平行軸歯車
まずは、最も基本的でわかりやすい平行歯車に分類される歯車の種類について解説していきましょう。
平歯車
※平歯車画像
最もオーソドックスな歯車が平歯車です。
平歯車は平行歯車の中でも、歯すじ(歯の厚み方向)がまっすぐなものを指します。
シンプルな歯車で、歯車というと平歯車を想像する人が大半でしょう。
平歯車は、歯車の中でも最もシンプルなことから製造が容易で、高精度な歯車を製造しやすいというメリットがあります。
平歯車はその汎用性の高さと製造のしやすさから様々な場面で用いられており、わかりやすい例としては、ゼンマイ式のおもちゃなどの動力伝達に使用されています。
また、機械の動力伝達にも平歯車が主軸となる場合がほとんどです。
内歯車
※内歯車画像
内歯車はインターナルギヤとも呼ばれることがあります。平歯車と噛み合う円筒状の歯車で、内側に歯がついているのが特徴です。
内歯車は、平歯車と組み合わせて使用する必要がありますが、1つの平歯車と組み合わせて使用するケースはあまりありません。
内歯車が最も利用されるケースは「遊星歯車」です。
この遊星歯車は、モーターやエンジンの減速機構として使用され、省スペースでも大きな減速比を得られるのが特徴です。あまり見ることのない内歯車ですが、車やモーターなどによく使われています。
遊星歯車は複雑な動きをするので、動画で確認したほうが理解しやすいはずです。
はすば歯車
※はすば歯車画像
はすば歯車は、平歯車とよく似ていますが、歯筋がツルマキ状になっているのが大きな違いで、ヘリカルギアとも呼ばれます。
はすば歯車は、平歯車に比べて歯の長さが長くなることから強度に優れています。
平歯車と比べて、一度に接する面積が少ないことが影響し、噛み合いがなめらかで、動作音が静かという特徴があります。
はすば歯車は、歯がねじれているため、組み合わせる対の歯車は逆回転のねじれを持ったはすば歯車を利用する必要があるので注意が必要です。
ねじれの区別については、歯筋を面に見たときに歯筋が右上に上がるものを「右ねじれ」、左に上がるものを「左ねじれ」といいます。
歯車にトルクがかかった場合に、スラスト力(軸方向への力)が発生してしまう点に注意が必要です。はすば歯車を使う場合は、スラスト力を受け止めるだけの軸受が必要になることを理解しておきましょう。
はすば歯車は、省スペースでも歯先に強度が必要な機械部品などに多く用いられます。
釣りに使用されるリールなどでもよく用いられています。
やまば歯車
※やまば歯車画像
ねじれの異なる2枚のはすば歯車を重ねた形状をしているのがやまば歯車です。ダブルヘリカルギアと呼ばれる場合もあります。
はすば歯車とよく似た特徴を持ちますが、ねじれが対になっているためスラスト力がかかりません。
噛み合わせの滑らかさと、歯の強度に優れているため、大型で大トルクなモーターなどの減速機構によく使用されます。
ラック
※ラック画像
ラックは、直線に歯が並ぶ歯車で、ピニオン(平歯車)とセットで使用されます。
ラックの最大の特徴は、回転運動を直線運動へ変換したり、直線運動を回転運動に切り替えられる点にあります。
ラックは幅広い機械に使用されており、工作機械のテーブル移動などの機構に使用されます。
ラックには、歯が斜めについた「はずばラック」もあり、要求される歯の強度などで使い分けがされます。
交差軸歯車
交差軸歯車は、2つの歯車の軸が交わるタイプの歯車を指し、出力側の回転運動の方向を変更したい場合に使用されます。
すぐばかさ歯車
※すぐばかさ歯車
交差軸歯車で最も一般的なものがすぐばかさ歯車です。まっすぐな歯をしていることから直刃(すぐば)かさ歯車と呼ばれる場合もあります。
かさ歯車の中では製造しやすい形状をしているため、動力伝達として幅広く使われています。
しかし、噛み合わせがなめらかではなく、動作音が大きいというデメリットも。
かさ歯車の中でも、歯の数が同じものを90°で突き合わせたもののことを「マイタ歯車」と呼びます。
すぐばかさ歯車は、産業用ロボットや電動工具などに幅広く使用されています。
はすばかさ歯車
※はすばかさ歯車
はすばかさ歯車は、かさ歯車の歯を斜めにしたものです。
先程紹介したすぐばかさ歯車よりも、はすばかさ歯車のほうが、歯の噛み合わせが大きく強度と静音性に優れています。
すぐばかさ歯車と用途はほとんど同じですが、はすばかさ歯車のほうが耐久性や静音性に優れているため、採用率が高くなっています。
まがりばかさ歯車
※まがりばかさ歯車画像
はすばかさ歯車とよく似ていますが、まがりばかさ歯車は歯がツルマキ状になっているのが特徴です。
はすばかさ歯車よりも更に、歯の噛み合わせが強固になっているほか、静音性にも優れています。なめらかな動きから耐久性が高くなっているのも特徴です。
この特徴から、高出力、高回転の動力を有する産業用ロボットや車、電動工具など幅広い分野で活躍しています。
冠歯車
※冠歯車画像
冠歯車は、角度が0°のかさ歯車といってもいいでしょう。
役割としてはラックに近いものがあり、速度比を大きく取りやすいという特徴があり、平歯車やかさ歯車のどちらにも組み合わせられます。
大きな力を伝達するには不向きですが、省スペースで組み付けられることもあり、小型のギアボックスによく用いられています。
食い違い軸歯車
食い違い軸歯車は、平行でもなく、交わりもしない、互いに食い違う軸である関係の歯車を指します。
食い違い軸歯車全体に言えるのが、減速比を大きく持てることです。
それでは見ていきましょう。
ウォームギア
※ウォームギア画像
ウォームギアは、ここまで紹介してきた歯車とは異なり、歯がねじのような形状をしているのが特徴です。
ウォームギアが回転すると、ウォームホイールと呼ばれる歯車がゆっくりと回転します。
ウォームギアの回転速度に対して、ウォームホイールは1/10から1/60程度の大きな減速比を得られます。
また、ウォームギアは、ウォームホイールの出力ではほとんど回転せず、ロックされてしまいます。これは摩擦係数が大きく関係しますが、このウォームギアが回転しない現象のことを「セルフロック」といいます。
ウォームギアが使われているので最も身近なものはエレベーターの昇降機です。
このウォームギアの強力な減速比によって得られるトルクを利用しているとともに、セルフロック現象で意図せぬ落下を防ぐ仕組みになっています。
ハイポイドギア
※ハイポイドギア画像
ハイポイドギアは、まがりかさ歯車とよく似ていますが、歯筋方向への滑りがあるのが大きな特徴です。
歯筋方向への滑りがあることで、回転がなめらかになり、高速回転でも騒音や振動が少なくなります。
この特徴からハイポイドギアは自動車の「差動装置」に長年採用され続けています。
ねじ歯車
※ねじ歯車画像
ねじ歯車には、交わる軸をもった2つのはずば歯車が組み合わせて使用されます。
どちらの歯車もはすば歯車ではありますが、歯車の噛み合わせが平行から垂直に変わっているのが特徴です。
ねじ歯車は強度こそあまりありませんが、小型でも高い減速比を実現できるため、小型のギアボックスなどで使われます。
歯車はどうやって作られているの?
ここまで紹介してきた歯車ですが、様々な種類があり驚いたという方も多いのではないでしょうか?
今回紹介した歯車を作るのに用いられる工法は
- 切削
- 鋳造
- プレス
- 研削
など様々です。
歯車の作り方については下記の記事で詳しく紹介しているので、興味のある方は是非チェックしてみてください。
※「歯車 作り方」へのリンク
歯車の知識があれば機械設計の自由度がアップ!
今回紹介した歯車について知るだけでも、作りたい機械にはどんな歯車が最適なのかある程度理解できたのではないでしょうか。
使用する場面に応じて正しいギアを選択できるようになれば、機械の動作がなめらかになりますし、機械の寿命も延びることでしょう。加えて、必要以上にコストをかけてしまうこともなくなります。
これから機械を設計していくのであれば、今回紹介した歯車の種類を思い出してみてくださいね。
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