エンドミル

切削工具

【初心者向け】エンドミルの基礎を再研磨屋が解説!

普段切削加工を行っている人には欠かせないエンドミルですが、他の切削工具とどのような違いがあるのか、

 

またどのようにして選定し、使用し、再研磨するのか。工具屋さんの勧められた通りに使うのも良いですが、

まだまだエンドミルの能力を最大限に引き出せていないかもしれません。

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エンドミルができる加工

まずはエンドミルがどういったものなのか、どういった加工ができるのかを見ていきます。切削工具といえばエンドミル以上に有名なのがドリルですが、ドリルは穴を空ける、つまり上下に動かすことしかできません。

しかしエンドミルは一本の工具で外周削り、肩削り、溝削りをはじめ、曲面削り、穴加工も可能な多機能工具と言えます。

 

 

エンドミルの各部の名称

エンドミルには、各部分に名称がついています。非常に細かく名前がついているので何年もエンドミルを使用している方でも意外にその箇所の名称を知らないということもあるのではないでしょうか。まずは、各方向からエンドミルを見ながらその名称を確認していきます。

外周刃側から見たエンドミル

 

 

底刃側から見たエンドミルと底刃

 

エンドミルの刃部詳細

 

 

径による各刃部の角度や大きさ

細径 12φ基準 太径
外周スクイ角 14°(4刃新品時)
外周2番幅 1mm
外周2番角 9~14°
外周3番角 約25°
底刃2番幅 約1.5mm
底刃2番角 約6°
底刃3番角 約24~29°
底刃スクイ角 4~8°
ギャッシュ 約30~50°
バックテーパー 2/100

エンドミルの材質

エンドミルの刃部に使用される材質は硬い順にダイヤモンド焼結体、cBN焼結体、セラミック、サーメット、超硬、ハイスとなっています。

じん性 耐摩耗性
ハイス
超硬
サーメット
セラミックス
cBN焼結体
ダイヤモント焼結体

※6段階中6が高く、1が低い

中でも一番流通量の多い、ハイスと超硬に関してもう少し詳しくみていきましょう。

ハイス鋼(高速度工具鋼)

高速による発熱下でも切削が可能であることから、High Speed Steelと呼ばれていて、日本語でも高速度工具鋼と言い、一般的にハイスと呼んでいます。高速度工具鋼は、1,200℃前後で焼入れを、550℃前後で焼戻しを行うことで64~69HRC程度の硬さを得ることができます。

超硬

超硬合金はその字のごとく非常に硬く(約73~80HRC)耐摩耗性に優れています。高速度工具鋼と比べると、たわみに対して3倍程度の強度があります。したがって、切削加工中の工具のたわみが生じ難いという利点があり、小径エンドミルに多く用いられるようになりました。下図は、超硬エンドミルとHSSエンドミルで、側面切削を行った際の加工精度を比較したものです。

構造による分類

エンドミルは、その構造によって主に3種類のタイプに分けることができます。その種類によってメリットやデメリットがあるので注意して選定しましょう。

ソリッド

昔からある一般的なシャンクと刃が一体となったエンドミルをソリッドタイプのエンドミルと呼んでいます。刃が使えなくなると、再研磨を行うか、シャンクごと全て破棄しなければなりませんが、シャンクと刃が一体となっているため精度は一番良く出て、切粉の排出性も良くなっています。

ろう付け

刃の部分だけがロウ付けしてあるエンドミルです。主に超硬で太径のエンドミルによく見られます。超硬は非常に高価な鋼材ですので、太くて長い工具をシャンクから刃部に至るまで全て超硬で製造すると1本何十万円もしてしまいます。特に超硬の性質が必要な刃部だけ、超硬にし、他のシャンクや溝の部分は違う鉄鋼材を使用することで安価で太い超硬エンドミルが使えるようになりました。

スローアウェイ

刃の部分だけを自分で交換取付をする、タイプのエンドミルです。刃を「投げ捨てる」という意味からスローアウェイと呼んでいます。交換するのは刃の部分にあたるチップだけですので、大量生産など長く使用する場合は非常に経済的です。ただし、刃の取付が難しく精度が必要な加工には不向きです。また、切粉の排出性もあまり良くないので、自動運転で稼働させたい場合には不安が残ります。

エンドミルの刃について

刃数

エンドミルの刃数は、1,2,3,4,5,6,7,8…とありますが、下図のように刃数が多くなると切り屑を収容できる空間が小さくなります。刃数の少ないほうが、切り屑を収容する空間を、大きくすることができます。この切り屑を収容する空間を、チップポケット(チップルーム)と言います。チップポケットを大きくすると、切り屑の収容能力が増大し、大きな切り込みが可能になりますが、反面、工具断面積は小さくなり、工具剛性は低下します。また、再研磨を何度か繰り返すと、チップポケットが浅くなりますが、溝堀り作業で深くすることができます。

 

左右の刃の違い

シャンク側より見て、切れ刃が右側にあるものを右刃、左側にあるものを左刃と言います。右刃は右回転、左刃は左回転で使用します。また、ねじれの向きも右ねじれと左ねじれがあります。このねじれの向きと切れ刃の向きの組み合わせで、4通りがありますが、通常は右刃右ねじれが使用されます。

刃の形状の違い

エンドミルは、刃の形状も様々です。加工したい材質や内容、加工条件によっても選定する刃の形状が違ってきますので、下記の中から目的にあったものを選びましょう。

底刃 

基本的な底刃形状は下図の通りです。スクエアタイプやラジアスタイプなどでは、センタ穴が付いたものがあります。センタ穴が付いていると、垂直方向(Z方向)への突っ込み加工はできなくなります。

 

なかべこ

底刃は中心に向かって凹んだ形状になっている。座ぐり穴等で底刃の平面度がほしい時は「底刃フラット」のエンドミルを選定します。ただし、底刃フラットにすると、切屑の逃げが悪く切削抵抗が大きくなり、チッピングを起こしやすくなります。

 

不等刃

刃と刃の間が等間隔ではなく、ずれているものを不等刃のエンドミルといいます。不等刃にすることで、刃とワークが当たるリズムが不定期になり、びびりや振動が抑制されます。振動に困った時は迷わず不等刃のエンドミルを使用しましょう。 

 

外周刃 

代表的な外周刃形状は、下図の通りです。

外周刃の分類は角度がついているかどうか、粗加工用かどうかの2種類に大別できます。その形からもわかるようにV字の溝など、加工物に角度が必要な際に使用するのがテーパー刃です。またラフィング刃やニック刃は刃が波打っていたり外周に溝があるような刃で、どちらとも粗加工を行う時に使用します。 

バックテーパー

エンドミルは通常、 2/100未満の逆テーパー(バックテーパー)がついています。このバックテーパーによって切削抵抗を下げる効果があります。 

 

ねじれ角の違い

 

加工面の粗さとうねり、工具寿命や再研磨が容易なことなどから、ねじれ角30°が標準タイプとして適用されています。強ねじれ(45°以上)は、被削材との接触長が長く切れ刃の負担が軽減し、加工面粗さもきれいになりますが、うねりが大きくなることがあります。また、ねじれ角が大きいとリフト作用が大きくなり、切屑が垂直方向に持ち上がりやすくなって、Z方向への切り込み時、切屑の排出性がよくなります。

不等リード

複数の切れ刃のねじれ角のうち少なくとも1つのねじれ角が他の角度と違っているものを言う。例えば、4枚刃の向かい合う刃のねじれ角が同じで、隣り合う刃のねじれ角が少し違っている。これは不等刃と同様、通常のエンドミルに比べると、びびりを抑制する効果がある。

 

 切削条件

ここまで、エンドミルの名称や使い方などを見てきましたが、最後は使用する際に一番重要な切削条件です。もちろん切削条件は材質や内容によって様々ですがまずはその計算方法を頭に入れておきましょう。

回転数と送り

エンドミル加工において部品をきれいに,しかも能率よく仕上げるためには,回転速度,切り込み量,送りの3つを適切に調整することが重要です。しかし,これら3要素の関係は,材質や形状,使用しているエンドミルの状態,仕上げる加工面に必要とされる精度などによって大きく変わります。一般に,加工面をきれいに仕上げるためには,少ない切り込み量でゆっくりとした送りで加工するとよいと言われています。

 

切削方向

エンドミルの回転に対する送り方向によってアップカットかダウンカットかが決まります。ただし、溝切削においては、アップカットから切削が始まり、途中からダウンカットに変わることになります。アップカットでは、加工物への刃先の切込みゼロから始まり次第に厚くなります。ダウンカットでは、逆に切込みが次第に小さくなる方向で切削が進みます。一般に、微小切込みの仕上げ切削では、アップカットの方が良好な仕上面が得られやすくなります。一方、ダウンカットは、逃げ面の機械的こすり摩耗の進行が緩やかになる傾向にあり、工具寿命がアップカットに比べ長くなります。

 

加工でお困りの際は切削工具再研磨・製造のツールリメイクまでお問い合わせ頂ければ加工のアドバイスも致します。

 

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