ドリルには刃先を交換するタイプのものとそうでないもの(ソリッド工具)があり、交換式のものは大きく分けて2種類存在するんじゃ。今回は、刃先を交換するタイプのチップ交換式やヘッド交換式のドリルについて詳しく紹介していくぞぃ。
刃先交換式ドリルの構造は2種類
それぞれについて、詳しく説明する前にドリルの構造の種類について簡単に確認しておきましょう。代表的なドリルの構造は下記の3つです。
チップ交換式ドリル
チップ交換式ドリルは、スローアウェイドリルと呼ばれることもあります。
チップ交換式ドリルは、その名の通り先端部分に四角形や三角形のチップをホルダーに取り付けるタイプのドリルです。
多くのものは、中心部と外周部にチップを取り付けて加工するような構造になっています。
ヘッド交換式ドリル
ヘッド交換式のドリルは、ソリッドドリルの先端をそのまま取り外せるような構造になっています。
ヘッドの取り付け方法は、逆ネジが切られていてホルダーにねじ込むだけのものと、横方向からねじどめするようなタイプのものが存在します。
それぞれの構造のメリット・デメリット
それぞれの構造について、わかったところでソリッド工具とチップ交換式ドリルやヘッド交換式ドリルのメリット・デメリットについてみていきましょう。
ソリッドドリルのメリット・デメリット
まずは、一般的な刃先を交換しないタイプのドリルからです。
ソリッドドリルのメリット
加工精度が高い
ソリッド工具は、シャンクの部分や刃の部分全てが一体となっているため剛性が強く、刃先交換式のように取り付け時の微妙なズレが起こりません。
ですので、加工の精度は他のどのタイプよりも良いと言えます。
再研磨ができる
ソリッドドリルは再研磨でまた再利用することができます。
再研磨をすることで、チップ交換式やヘッド交換式と同じようにランニングコストを抑えることができます。
イニシャルコストが安い
ソリッド工具はチップやヘッド交換式のように高価なホルダーが不要なのでイニシャルコストが安く済みます。
ソリッドドリルのデメリット
再研磨で短くなる
再研磨を行うことで再利用できますが、削って刃を作りなおしますのでドリルの全長が短くなります。
溝長が短くなった場合は再研磨時に溝長を再加工し延長することができますが、全長はどうしても短くなってしまいます。
ランニングコストが高い
再研磨をすることでランニングコストを抑えることはできますがチップ交換式やヘッド交換式は、ホルダーが壊れない限り何回でも交換をすれば新品同様に使用できますので、ランニングコストは負けてしまいます。
チップ交換式ドリルのメリット・デメリット
チップ交換式ドリルのメリット
再研磨の必要が無い
チップ交換式ドリルは、刃先がチップのため刃先が磨耗してきた際に、チップを交換するだけで切れ味が元に戻ります。
工具の取り外しや工具長の測定などの時間をへらすことができるため、非常に生産性が高いです。
ランニングコストが安い
チップ交換式のドリルは、再研磨の必要がありません。ですので、再研磨に掛かるコストを抑えることができます。
また、ホルダの交換が必要なく、刃先のチップ部分だけの交換で済むので、チップの購入費用のみで切れ味を維持することができます。
これらの理由から、チップ交換式のドリルはランニングコストが安く済みます。
加工穴の底がある程度平らになる
ソリッドドリルやヘッド交換式ドリルと違い、チップ交換式のドリルは工具の先端部分がほぼ平坦な形をしています。
そのため、加工した穴の底がフラットになり、必要以上に穴を開けてしまうということがありません。
そして、止まり穴のタップの下穴に用いれば、タップの有効深さを深く設定できるために有利というメリットもあります。
チップの種類を交換すれば様々な材料に対応できる
チップ交換式ドリルは、先端のチップを交換できるため、チップの材質やブレーカー形状を変えることで様々な材質に対応できます。
そのため、ホルダーを一本買っておけば、チップを交換するだけで様々な材質に対応することが可能です。
ソリッドドリルでは、すべてを交換する必要があります。
ですので、種類を揃えるという点においては、チップ交換式ドリルは非常にコストメリットが高いです。
チップ交換式のデメリット
イニシャルコストが高い
チップ交換式ドリルは、ホルダーとチップを購入する必要があるため、イニシャルコストがどうしても高くなってしまいます。
ハイス鋼のソリッドドリルと比べるとイニシャルコストにおいては、かなりの金額差になってしまうでしょう。
そのため、量産加工で使用するのか、少量多品種に使用するのかをよく検討した上で、購入をする必要があります。
加工精度があまり良くない
チップ交換式のドリルは、あまり加工の精度が高くありません。
チップ交換式のドリルは底が平らになっているため、他のドリルに比べ、中心維持の能力が低いため精度があまりよくありません。
加工精度のレベルは、超硬ソリッドドリル>ヘッド交換式ドリル>チップ交換式ドリル>ハイス鋼ソリッドドリルとなっています。
ですので、高精度の穴加工を求められているのであれば、超硬ソリッドドリルやヘッド交換式のドリルを利用したほうがいいでしょう。
小さな穴を加工できない
チップ交換式は、チップを交換するための構造が必要なため、小さな径のドリルがありません。
φ14mm以上のものしかないため、これよりも小さな穴を加工したい場合はソリッドドリルを使用する必要があります。
ヘッド交換式ドリルのメリット・デメリット
ヘッド交換式ドリルのメリット
再研磨ができる
ヘッド交換式ドリルは、刃先が交換式のため刃先が磨耗してきた際に、ヘッド部分を交換するだけで切れ味が元に戻ります。
工具の取り外しや工具長の測定などの時間をへらすことができるため、非常に生産性が高いです。
また、ヘッド交換式ドリルは、チップ交換式と違い先端部分は通常のソリッド式ドリルと近い形状をしているため再研磨をすることでさらに経済的に使用することができます。
ランニングコストが安い
ヘッド換式のドリルは、再研磨の必要がありません。
ですので、再研磨に掛かるコストを抑えることができます。
また、ホルダの交換が必要なく、刃先のヘッド部分だけの交換で済むので、ヘッドの購入費用のみで切れ味を維持することができます。
しかし、チップ交換式のものに比べると、ヘッド交換式のもののほうが価格は多少高くなってしまいますが再研磨をすることでチップ交換式より経済的に使用できる可能性がありますので、購入前に比較する方がよいでしょう。
加工精度が高い
ヘッド交換式ドリルの加工精度は、高精度に加工が可能です。
加工精度は超硬ソリッドドリルに次いで加工精度が高いため、量産品の加工で高精度を要求されているのであれば、ヘッド交換式を選択するのがいいでしょう。
ヘッド交換式ドリルのデメリット
イニシャルコストが高い
ヘッド交換式ドリルは、ホルダーとヘッドを購入する必要があるため、イニシャルコストがどうしても高くなってしまいます。
ハイス鋼のソリッドドリルと比べるとイニシャルコストにおいては、かなりの金額差になってしまうでしょう。
そのため、量産加工で使用するのか、少量多品種に使用するのかをよく検討した上で、購入をする必要があります。
極小穴を加工できない
ヘッド交換式は、ヘッドを交換するための構造が必要なため、極小径のドリルはありません。
以前は、チップ交換式ドリルと同様に太径のドリルしかありませんでしたが、近年では工具メーカーの開発によりある程度細い径でもヘッド交換式のものが手に入るようになりました。
なかでもイスカルではスモウカムというヘッド交換式ドリルをφ4.0~からラインナップしているので、それ以上の穴径を加工する場合はヘッド交換式ドリルが使用できます。
用途によって使い分けよう
今回紹介したチップ交換式やヘッド交換式とソリッドタイプ工具の使い分け方は、まとめると下記のようになります。
・精度を重視する場合:ソリッドドリル>ヘッド交換式>チップ交換式
・ランニングコストを重視する場合:チップ交換式=ヘッド交換式>ソリッドドリル
交換式のタイプは両者ともに刃先を交換できるため、刃先を交換すれば様々な材質に対応できるのが非常に魅力的です。
しかし、精度を重要視する時、または単品加工で長期的な使用が予想されない場合はソリッドタイプを購入し必要な場合に再研磨を行う方がよいでしょう。
ヘッド交換式も再研磨によってより経済的に使用することができます。
使用する状況に応じて使い分けてみてくださいね。
ドリルの再研磨はツールリメイクにおまかせ
ツールリメイクでは、再研磨を専門にしており、お持ちの工具にピッタリの再研磨方法をご提案することが可能です。
ですので、ドリルだけでなく様々な工具を再研磨可能ですので、刃物の切れ味で困っているのであれば、ぜひ一度ご相談くださいね。
ツールリメイクではドリルの再研磨はもちろんのこと、ドリルのレンタルサービスも行っております。
詳しくは、下記の「現場を変える、切削工具レンタルサービス。」をご覧ください。